2013年04月30日

ALMAの開所式典

アンデスの巨大電波望遠鏡ALMA
ALMA(アルマ)はチリのアタカマ高地に姿を現した巨大な電波望遠鏡システムです。直径12mのアンテナ50基のメインアレイに加え、アタカマコンパクトアレイ(ACA、あるいは愛称「いざよい」)と呼ばれる直径7mのアンテナ12基と直径12mのアンテナ4基からなるシステムから成り立っています。ALMAは電波天文学分野のフラッグシッププロジェクトで、日本を中心とする東アジアと、北アメリカ、ヨーロッパが協力して、「世界で最も宇宙に近い」チリのアタカマ高地に建設しました。正式名称を「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計」といい、ALMAはその英語名称の略称ですが、同時にチリの公用語であるスペイン語では「魂」や「愛しい人」などの意味も持っています。

私自身が関わり始めたのはこの計画がまだ日本単独のLMA(大型ミリ波干渉計)と呼ばれていた頃です。その頃はまだ、野辺山にある30基のアンテナパッドをフルに活用して早期に10m×30基のミリ波干渉計を建設するか、ハワイなど国外の観測好適地に建設すべきかを検討していましたが、国外への建設が好ましいという結論に至るには多くの時間はいりませんでした。

国立天文台に職を得てからはチリのサイト調査に取り組みました。その後LMAがLMSA(大型ミリ波サブミリ波干渉計)への変更を経て国際プロジェクトであるALMAに至るまでには、さらに、概算要求、プロジェクト広報、国際交渉、地元チリとの連携、サイト開発、安全確保などに携わりました。国立天文台在職中の10年を振り返ると、いわゆる研究開発っぽくないことばかりを手掛けてきたことになります。論文や技術報告も、高地雷とか高山病とか、専門とかけ離れたものになりました。私がALMAを離れてJAXAに異動したのが2007年4月のことですから、それももう6年も前のことです。

晴れ晴れしくALMA開所式挙行
思えばALMAの建設に先立って起工式が行われたのは2003年11月のこと。当時まだ日本はALMA計画に正式参加できておらず、オブザーバーとしての参加で悔しい思いをしました。そのときの模様は国立天文台チリ観測所から動画として公開されています。

・ALMA建設記録 パート1 「ALMA Groundbreaking Ceremony(起工式)」 2003年11月撮影(13分43秒)

その後日本の正式参加が認められて本格的な建設フェーズに移ったALMAは、起工式から十年近い月日を経てこのたびようやく完成しました。やるべきことはまだいくつも残っていますが、これをもってALMAは建設フェーズから運用フェーズへと移行します。それを記念して2013年3月13日、チリ・アタカマ高地のALMA観測所山麓施設において、ALMA望遠鏡の開所式が執り行われました。

日本からの招待参加者だけでも約50人、欧米の招待参加者も合わせると350人で、メディアまで含めると500人規模の式典となりました。ありがたいことに私も元サイトチームリーダーとして呼んでいただきました。

式典のようすはインターネットでも中継されましたので詳細についてはそちらをご覧いただくとして、合同ALMA観測所のde Graauw所長によるALMAの説明と川辺良平チーフサイエンティストによる最新成果の紹介に始まり、文部科学省の福井照副大臣を始めとする各国の代表の挨拶やPiñera大統領によるスピーチがありました。大統領がほとんど原稿を見ずに英語とスペイン語で天文観測の重要性を熱く語っていたのには感動を覚えました。一見の価値ありです。

・ALMA Observatory Inauguration

山麓施設の公開
式典と食事会のあとは山麓施設の見学会です。当日の山麓施設はオープンキャンパス状態で、屋外のアンテナ移動台車にはアンテナが載せられていましたし(図1)、アンテナ組み立てエリアには日米欧の3種類の12mアンテナとACA用の7mアンテナが置かれ、シンクロして駆動されていました。室内の展示のハイライトは受信機の展示です。普段なかなか見られない受信機カートリッジと呼ばれる各受信バンドのモジュールが、完成品の状態で展示されていました。(図2)

01.jpg
図1 アンテナ移動台車に載せられたヨーロッパのアンテナ。OTTOというのはこの
移動台車の愛称で、もう一台にはLOREという名がついている。(国立天文台提供)


02.jpg
図2 ALMAの受信機カートリッジ。(国立天文台提供)


山頂ではアンテナ群が高速駆動
翌日には山頂施設の見学会が行われました。山頂施設内の観望エリアからはアンテナ配列の中心部がよく見え、「いざよい」を始めとするアンテナ群のデモ駆動が行われていました(図3)。更地だったときを知る身としては感無量です(図4)。

03.jpg
図3 山頂に揃った日本のアタカマコンパクトアレイ「いざよい」のアンテナ群。
(国立天文台提供)


04.jpg
図4 2005年3月の時点でのALMAサイトの中心エリアのようす。(国立天文台提供)


山頂建物内では12mアレイ用の相関器とACA用の相関器も稼働しており、演算速度はそれぞれ17pflopsと120Tflopsを誇ります(図5)。直接の性能比較はできませんが、相関処理だけでいうとあの「京」をも凌駕する能力です。これを空気の密度が半分しかない高山で稼働させるのは大変なことで、今回は見学できませんでしたが2階部分はこれらを冷却するための空調装置で占められています。

05.jpg
図5 稼働を開始したACA用の相関器とともに。空気が半分しかないところで
機器を冷却するのは大変。(国立天文台提供)


全体の2/3のアンテナを使って2期目の科学観測も始まっており、フル稼働もまもなくです。一般向けの見学ツアーも早く実現してほしいものです。


宇宙航空研究開発機構 阪本成一
posted by 事務局スタッフ at 10:26| Comment(0) | UNIVERSEニュース