2013年05月31日

太陽活動の極大と宇宙天気について

太陽は、9年から13年くらい(平均すると11年)の周期で活動が活発な時期(極大期)と静穏な時期(極小期)を繰り返しています(図1)。活動の極小から極小までの期間をひとつの太陽活動サイクルと呼びます。1755年から始まったサイクルを1番目のサイクル(サイクル1)として、順番に番号が付けられています。2009年から始まった現在のサイクルは、24番目のサイクル24です。米国海洋大気局宇宙天気予報センター(NOAA/SWPC)によると、サイクル24の極大は2013年の5月頃と予測されています。極大期には太陽フレアの発生数も他の時期に比べて多くなります。サイクル24では、これまでに大規模なXクラスフレアが17回ほど発生しています。サイクル23では合計で126回のXクラスフレアが発生していますので、これに比べると、まだ、1割程度です。

01.jpg
図1:太陽黒点数のプロット(SIDCのデータによる)


極大の黒点数については、1902年から始まったサイクル14以来、約100年ぶりに太陽活動の低いサイクルになるのではないかというNASAの予測もありますが、2013年の5月には、約2日の間に4回のXクラスフレアが発生しました(図2)。図3に示したのがSDO衛星(NASA)の極端紫外線望遠鏡によって観測された4回のXクラスフレアの画像です。太陽フレアからの強い紫外線やX線の影響で電離圏の下部領域が異常電離し、短波を吸収する現象(デリンジャー現象)が、情報通信研究機構(NICT)のイオノゾンデと呼ばれる電離圏観測装置により観測されました(図4)。デリンジャー現象が発生すると短波電波を使った飛行機や船との長距離通信に影響がでることがあります。

02.jpg
図2:米国の気象衛星GOESによって5月に観測された4回のXクラスフレア。発生したフ
レアの最大値により、小規模なものからA、B、C、M、Xの順にクラス分けされている。


03.jpg
図3:SDO衛星の極端紫外線望遠鏡(AIA193)で観測されたXクラスフレア


04.jpg
図4:5月15日のXクラスフレアの際の情報通信研究機構の電離圏観測装置(イオノゾン
デ)による沖縄での観測。縦軸が高さ、横軸が周波数を表す。左図はデリンジャー現象
の発生する前、右図はデリンジャー現象が発生しているときの観測。右図では、デリ
ンジャー現象により左図に見られる電離圏からの反射が観測されなくなっている。


短波電波を使った長距離通信、人工衛星、人工衛星を使った測位、送電網など人間の作ったシステムに影響を与えるような宇宙環境の乱れは、「宇宙天気」と呼ばれています。宇宙天気は、太陽フレアなど太陽活動の影響によって乱されます。たとえば、太陽フレアに伴うコロナ質量放出(CME)の影響が地球に到来して大きな地磁気嵐が発生にすると送電線に地磁気誘導電流(GIC)が流れ、送電網などに障害が発生することがあります。日本でも明治24年(1909年)9月29日に発生した大きな地磁気嵐の影響で、東京とガム島や硫黄島など長距離の電信が不通になったという記録が残されています。このとき、札幌や新潟などでもオーロラが見られたとのことです。また、2003年10月に発生した大きな地磁気嵐の際には、日本の北海道や東北とほぼ同じ地磁気緯度に位置する南アフリカ共和国で電力網のトランスが焼損したという報告があります。

極大を挟む2〜3年程度の間は、太陽活動が活発な時期で宇宙天気も荒れ模様となることが多くなります。Webページやメールで提供しているNICTの宇宙天気情報にご注意ください。

情報通信研究機構 電磁波計測研究所
宇宙環境インフォマティクス研究室
亘 慎一
posted by 事務局スタッフ at 17:47| UNIVERSEニュース

2013年05月22日

大学生と高校生がハイブリッドロケットを作って打ち上げるロケットガール&ボーイ養成講座YACチーム

001.JPG
YACチームロケットをランチャーにセットして記念写真。
伊豆大島にて。(日本宇宙少年団提供)

2013年3月17日、東京の伊豆大島から全長約1m半のハイブリッドロケットが打ち上げられました。このハイブリッドロケットを作ったのは、実はいくつかの高校からロケットガール&ボーイ養成講座YACチームに集まった高校生たちです。
そして、この講座で、高校生にハイブリッドロケット の作り方から打ち上げまで、プロジェクトマネージメントも含めて指導しているのは、関東のいくつかの大学から集まったCOREというハイブリッド ロケットの製作、打ち上げを行っている大学生のみなさんなのです。

教材としてもすぐれているハイブリッドロケット
ハイブリッドロケットとは、推進材が、液体の酸化剤と固体の燃料を組み合わせたものです。火薬や高圧ガスを使わないため、比較的安全性が高いロケットです。うまく作れば、数百mもの高度に達しますので、上空で空き缶サイズの模擬人工衛星を放出させることもできます。ロケット自体は、パラ シュートなどを使って回収します。安全確保については企画運営側が徹底した管理を行い、またその安全に対する意識も高校生に学んでもらいます。

高校生が自ら考え、製作、打ち上げるロケットガール&ボーイ養成講座
「理数が楽しくなる教育」実行委員会が主催する講座で、製作の支援は、各拠点それぞれの担当機関によって行われます。YACチームは、公益財団 法人日本宇宙少年団(YAC)が担当しています。ハイブリッドロケットの設計・製作・打上げまで、
すべて高校生が行います。高校生自身が問題点を発見し、仲間と協力して解決に挑むことで、技術だけでなく、プロジェクトマネジメントやチームワークを学びます。

・ロケットガール&ボーイ養成講座のホームページ

高校生を指導する大学生チーム「CORE」
2013年のYACチームは、1月13日のキックオフミーティングから始まりました。
3月の打ち上げまでの3カ月間、班ミーティングや全体会、 製作を行って行く最初のミーティングで、大学生チーム「CORE」によって、高校生がスケジュールや内容を自ら考えていけるように進められまし た。「CORE」は、Challengers Of Rocket Engineeringの略で、関東圏大学の学生が集まり、ハイブリッドロケットの製作を行っている団体です。

・「CORE」Challengers Of Rocket Engineeringのホームページ

YACチームの2013年の製作と打ち上げ、そして発表
YACチームの高校生は、ロケット本体を担当する機体班と、放出機構などを担当する電装班に別れ、班ミーティングと全体会を繰り返して、1月 ミッション決定、2月機体製作、3月機体完成、打ち上げというスケジュール、「高度1kmに到達し、安全な着地」「センサによる軌道計算 センサ データからロケットの軌道を逆算」「音波を用いたドップラー効果の観測 ブザーを使用」「カメラによる動画撮影 小型カメラで揺れ・回転・移動経 路を記録」というミッションを自ら設定しました。主にスカイプやメールを使って連絡を取り合いながら製作をすすめました。

002.jpg
YACチームのロケットの搭載配置図。(日本宇宙少年団提供)


ロケットを打ち上げるのに不可欠な燃焼については、COREの大学生が燃焼講習会として、高校生たちにプレゼンテーションをして、燃料、エンジ ンなど基本的なことから、COREの燃焼班が行っている燃焼シークエンス、地上設備GSEの説明を行っていました。また、実際にロケットが到達する最高高度を高校の物理で解けるレベルで解析してみるといったクイズを出題するなどしていました。

製作に関しては、高校生は初め、受け身的であったり、仲間同士の意思疎通がうまくいっていないところが見受けられましたが、COREの大学生は 必要最低限の指示しか出さないので、そのうち高校生たちも、これではロケット製作が進まないと感じたのか、自分たちで考えを出し合って、励まし 合って、コミュニケーションを活発にすることを始めるようになりました。設計はうまくできていても試験では思い通りにうまくいかないことも多々あ り、最後は大学生がフォローすることもありましたが、そういう経験を通して、スケジュールや見通しの立て方について学んでいるようでした。

中間発表会では、高校生が製作するロケットのミッションと製作進行状況をプレゼンし、大学生などから講評を受けていました。

003.jpg
中間発表会の様子。(日本宇宙少年団提供)


004.jpg
解放機構について話し合うYACチーム。(日本宇宙少年団提供)


3月、打ち上げ実験は、東京の伊豆大島で行われました。宿にいる間も最後まで調整を続けていました。こういった、スケジュールや見通しについて は、講座の最後の最後まで、なかなかうまくいかず難しかったという意見が高校生からは聞かれ、身にしみてチームで1つのプロジェクトに取り組む難 しさを体験したようでした。

005.JPG
電装班は、打ち上げ直前までプログラムの内容を確認していた。
(日本宇宙少年団提供)


006.JPG
伊豆大島の強風の中、ロケットを組み立てるYACチーム。
(日本宇宙少年団提供)


007.JPG
ロケットをランチャーにセットする。(日本宇宙少年団提供)


008.JPG
ロケットをランチャーにセットする。(日本宇宙少年団提供)


009.jpg
YACチームロケット「バーバー」打ち上げ(ビデオからのキャプチャー画像)
(日本宇宙少年団提供)


YACチームのロケットの打ち上げ結果は、高校生によるその後の分析から、機体としては、開放機構が作動しパラシュートを出すことはできたが、 パラシュートが完全に開かず落下し、機体が真っ二つになってしまい、電装としては、カメラ、センサー全て正常に機能し、記録に成功したという結 果ということでした。YACチームのメンバーは、「作業は困難の連続だったけれど、打ち上げはすごく感動した。ぜひ皆さんにも体験してほしい。」 と語っていました。

YACチームのロケットガール&ボーイ養成講座での取り組みについては、4月20日に開催された「高校生の宇宙教育シンポジウム」にてYAC チームのメンバーが発表をしているので、そちらをご覧下さい。

・高校生の宇宙教育シンポジウム Ustream

010.jpg
高校生の宇宙教育シンポジウムでのYACチームの発表。
(日本宇宙少年団提供)


日本宇宙少年団では、将来の日本を担う若手を実践的に育成する本講座継続のためのスポンサーを募集しております。

公益財団法人日本宇宙少年団 小島俊介

posted by 事務局スタッフ at 17:44| UNIVERSEニュース