2014年01月29日

あなたの住む町の星空は?〜空の健康診断を続けよう

「全国星空継続観察」という事業を聞いたことがあるでしょうか。或いは、「スターウォッチング・ネットワーク」という名前のほうが知られているかもしれません。
これは、環境省の呼びかけで全国各地で一斉に星空の見え具合を観察する事業で、夏と冬の年に2回、1988年(昭和63年)から20年以上も続けられてきました。星空観察といっても星を眺めて楽しむだけではありません。星空の観察を通じて、自分たちが住む地域の夜空の明るさ、ひいては空(大気)の環境調査のための観察なのです。いわば、空の健康診断と言ってもよいかもしれません。
夜空の星を眺めようと思っても、街灯やビルの明かりが眩しかったり、なんだか空がどんよりと霞んでいて、星がはっきり見えないということはありませんか。天の川という言葉を知ってはいても、実際に見たことがないという人も少なくないかもしれません。星がきれいに見える空というのは、塵(ちり)が少なく澄んだ空、言わば健康な空と言えます。星の見え方は空の健康状態を調べるためのバロメーターになるのです。また、夜空を明るくする原因となっている夜間の人工照明の効率的な利用について見直す際にもたいへん参考になるでしょう。

自分たちが住む町の空の環境を星空を通じて調べ、それが年々どのように変化するか経過を見ること、さらに自分たちが住む町の空の環境にも関心を持つこと。それが、「全国星空継続観察(スターウォッチング・ネットワーク)」の目的です。
しかし、2013年春、環境省はこの事業の休止を決定しました。2011年度からこの事業予算が廃止、2012年度は多くの呼びかけ人や全国の有志に支援されながら事業継続はしたものの、2013年度は諸事情によりこの事業運営が困難になり、環境省が当面の休止を宣言したのです。
長年蓄積されてきた全国の夜空の明るさの継続観察データを途切れさせるのは、とても残念なことです。年に2回の定期健康診断を止めることで、空の健康状態を把握する手段の一つがなくなってしまいます。とくに、全国十数カ所の定点観測地点では、写真撮影による定量的な夜空の明るさの観測データが蓄積されています。国立天文台も、事業開始当初からデータの解析、そして2005年度からは定点観測地点としても、この調査に貢献してきました。

この休止となった事業が再開するまでの間、この観測データが途切れることを防ぐため、2013年夏、2014年冬の「全国星空継続観察」については、「暫定調査」という位置づけで夜空の明るさの写真撮影の調査の呼びかけとそのデータのとりまとめを、有志団体(星空公団)が引き継ぎました。2013年夏の調査は無事終えて、その結果が公表されています(冬の調査は1月21日〜2月3日)。
この調査は、特定の団体や個人に限らず誰でも調査に参加することができます。デジタル一眼レフカメラで夜空を撮影して、指定のサイト(デジカメ星空診断)へアップロードするだけです。

私も先日、「全国星空継続観察」のための夜空の写真撮影を職場(国立天文台)で行いました。雲一つないよく晴れた寒い夜、頭上には冬の星座が広がり、明るい1等星も、いちだんと明るい木星も、とてもきれいに輝いていました。でも、暗闇に目が慣れると夜空がとても明るいことを改めて感じました。とくに都心方向の低空では、その空の明るさに飲み込まれてしまうかのように弱々しくか細い光で星が瞬いていました。東京の夜空はなんと明るいことでしょう。
先日、若田宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)から撮影した夜の日本列島の写真を見ても、関東平野の明るさに目を奪われます。人間が夜間活動するためには照明が必要です。でも、空に放たれている無数の明かりはほんとうに必要なものでしょうか。

25年前と現在、夜空の明るさはどのように変わってきたのでしょうか。私たちの頭上に広がる星空は、10年後も20年後も美しいままでしょうか。私たちの祖先が思いをはせた美しい星空や星空が見える環境を、未来に子孫に引き継いでいくのも、私たちの大事な使命の一つかもしれません。美しい星が見られる空の環境を守ること、そしてゆったりと星空を眺められる平和な世の中を、将来に繋げていきたいものです。

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2014年1月23日に国立天文台三鷹構内(東京都三鷹市)で撮影した夜空。50mmレンズを取り付けたデジタル一眼レフカメラを天頂に向け固定撮影したもの。露出時間は、それぞれ30秒、60秒、120秒。明るい星しか見えていない。測定された夜空の明るさはこの数年は17等級前後だった。都心よりは1等級以上暗い。



参照先リンク
・環境省 全国星空継続観察(スターウォッチングネットワーク)
 http://www.env.go.jp/kids/star.html

・星空公団 全国星空継続観察の休止に伴う暫定調査実施について
 http://kodan.jp/release130421/

・星空公団 デジカメ星空診断
 http://dcdock.kodan.jp/

・若田宇宙飛行士が国際宇宙ステーションから撮影した日本列島の夜景
 (若田宇宙飛行士ツイッター @Astro_Wakata より)
 https://twitter.com/Astro_Wakata/status/428192458376110080/photo/1/large

国立天文台天文情報センター 広報室
小野智子
posted by 事務局スタッフ at 15:20| UNIVERSEニュース