2014年01月22日

深海潜水船の迫力

みなさんの前に突然に現れては、また消えていく・・・。
まるで深海生物ダイオウイカの如くUNIVERSEニュースに(たま〜に)登場するJAMSTEC海洋研究開発機構です。こんにちは。

星空や宇宙探査が大好きな読者のみなさんも、昨年に突如として沸騰した「深海ブーム」が気になったのではないでしょうか。太陽光も届かない暗黒世界の神秘的な生命体や探査機たちに、オッ?!と、ご関心をいただけたのではないかと思っています。正直、私たち海洋科学技術の広報に携わっているものでも、世の中に、こんなに深海ファンがいらしたんだと、たくさんのお問い合わせにうれしい悲鳴を上げながらも、少し晴れがましいですね、という気持ちでもあります。

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ウィリアム・ビービ(左)とオーティス・バートン。潜水球「バチスフィア」の前で。
Image courtesy of the Wildlife Conservation Society


「海に潜る」という人類の挑戦の歴史は実に古いものです。すでに紀元前には、アレキサンダー大王が潜水鐘(ガラス製)で潜航したとか、日本でも戦国時代に村上水軍が潜水船を計画した(実現したかは不明)なんていう記述が残っているそうです。1930年代に海洋学者で探検家でもあったウィリアム・ビービが、自ら潜水球「バチスフィア」に乗り込み、世界で初めて深海の冒険に挑んでからというものの、さまざまな工夫や苦労(!)を重ねて、今日では水深4000mを超える深度まで調査できる有人潜水船が各国で活躍しています。このあたりのお話は、われらが「しんかい6500」の潜航長を務めたパイロットが書き下ろした一冊、『ぼくは「しんかい6500」のパイロット』にも紹介されています。

そんな挑戦をし続けてきた有人潜水船の実機を、あなたの目の前で見て、その迫力を感じてみたいと思いませんか。いや、好奇心旺盛な天文宇宙ファンのみなさんであれば、当然そう思うでしょ!

じゃあ、今でしょ!と、聖地ヨコスカにあるJAMSTEC本部にお出かけいただいても、残念ながらご覧になることはできません。ごめんなさい。鋭意運用中の「しんかい6500」をはじめ、潜水船や探査機は調査航海に出かけていることが多く、なかなかご見学いただける機会を設けることができません。

ところがです。実機を見る方法があるんです。しかも、いつでも。

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有人潜水調査船「しんかい2000」


「しんかい2000」という、名前のお尻についた番号が異なる潜水船があります。この娘は「しんかい6500」のお姉さんにあたる日本初の本格的な潜水調査船で、その名の通り、水深2000mまで潜航することができます。1981年の完成後、暗黒で高圧の深海という環境でも体内で化学合成を行うシロウリガイのコロニーを発見したり、深海熱水噴出域を日本で初めて発見したりと、のべ数百人の国内外の研究者とともに深海研究の飛躍的な発展に貢献しました。2002年11月11日に、1411回目となるラストダイブを相模湾で終えた後、20年の長きにわたった任務を終えました。

その「しんかい2000」は、2012年に神奈川県にある新江ノ島水族館にお嫁に行き、現在は第2の人生を歩んでいます。展示となっても「しんかい2000」は元気です。絵本『きかんしゃ やえもん』のように、毎日、毎日、たくさんの大人や子供たちが会いに来てくれます。水深2000mの圧力にも耐えられる耐圧殻もそのままに、イザとなれば、いまでも深海に旅立てる気持ちを持った実機です。水族館スタッフのみなさんに、いつも船体を綺麗に磨いていただいていますが、潜航当時の傷やマニピュレータの使用感からは、実際に人が乗り込んで深海底に行っていた気配が感じられて、何とも言えないホンモノの迫力があります。

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ホンモノですから、整備も行います。

年末の12月28日には、かつて「しんかい2000」の運航チームだった面々が、特別に集結し、大掃除とばかりに行った船体整備が公開され、会場からあふれるほど多くのみなさんにその様子をご覧いただきました。

「しんかい2000」運航チームといっても、運用が終了した現在は解散してしまっています。すでに退職された司令や、いまは研究船の管理部門などで現場を支える元パイロットや整備士などのみなさんが、普段使っているキーボードやマウスをドライバーやスパナに持ち替えて、実に手際よくカバーやカメラなどを取り外していきます。命を預かる現場ですから厳しい表情になることも多く、何かとコワモテな印象のみなさんですが、時に笑顔がこぼれ、なにより、久しぶりの現場仕事を、とても楽しそうに整備していたのが印象的です。

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この日だけ2Kチームが再結成


このような場面に居合わせるときに、私がいつも感じることは、ホンモノの潜水船そのものだけではなく、実は、その「モノ」に携わる「人々」に出会っていただくことなんだと感じます。

「しんかい2000」を愛情こめて「2K」と呼びあう人たちの表情や、実際に暗黒の深海を冒険してきた人生の凄味こそが、ホンモノの持つ「迫力」として私たちに伝わってくるのだと思います。

ぜひ一度、ホンモノの2Kに会いにお出かけください。

こちらもゼヒ。
■開催された「しんかい2000」公開整備イベントの様子を新江ノ島水族館のブログでご紹介いただいています。|えのすいトリーター日誌

■新江ノ島水族館 深海I〜JAMSTECとの共同研究〜 深海II〜しんかい2000〜
(〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-19-1)

■深海映像画像アーカイブズ|JAMSTEC
「しんかい2000」が潜航記録した画像映像も探せます。人気のアノ深海生物も。


それでは、またUNIVERSEニュースに出没する日まで。

海洋研究開発機構 広報部
吉澤 理
posted by 事務局スタッフ at 09:32| UNIVERSEニュース